あるケミストの独り言(winchemwinの日記)

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Pyscfによる量子化学計算 2-2 ー インプットファイルの作成 2 ー

 前回の記事でPySCFの初期ファイルの作成方法の説明をさせていただきました。
今回は初期ファイル作成に必要な分子の幾何構造の入力方法等について紹介したいと思います。

PySCFでは、分子の幾何構造の入力方法にはいくつかの方法があります。

・テキスト入力

 テキスト入力は、最も基本的で一般的な方法です。分子の原子とその座標をテキスト形式で直接指定します。いくつかのフォーマットがありますが、代表的なものはカーテシアン形式です。以下では水分子の構造を座標データから設定しています。
例: 水分子の定義

mol = gto.M(
atom = '''
O 0.000000 0.000000 -0.11779
H 0.000000 -0.757160 0.46964
H 0.000000 0.757160 0.46964
''',
basis = 'sto-3g'
)

座標単位の設定はmol.unit で行われ、Angstrom:’AU’, Bohr: 'B'となっています。

・ファイル入力
 小さな分子であればひとつひとつ原子と座標を設定することも可能ですが、大きな分子であれば予め外部ソフトで作成した座標ファイルを読み込むのが便利です。Pyscfではxyzファイルの読み込みに対応していますので、下記のように設定することで既存ファイルから座標データを読み込み、設定することが可能です。

  mol = gto.M(atom='molecule.xyz', basis='sto-3g')

 xyzファイルの作成ですが、有償のChemDrawなどのソフトウェアでは容易に作成できますし、フリーのアプリであれば以前に紹介したMolViewなどを利用することで比較的簡単に作成することができます。

 以上、今回は分子の幾何構造の入力、作成方法等について紹介させていただきました。次回はその他の初期ファイルの設定について紹介したいと思います。